草原を後に

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「そうか~」「そうだよね、ピーピーが、魚を獲って来たんだから」 「この、くそ暑い砂丘とも、もう直ぐお別れできるんだな」 皆は、大喜びする、緋芽は、大きな木の枝で、休んでいるピーピーを見て 「あんな大きな魚も、獲って来れるんだから、もうピーピーじゃ無いよね もっと、良い名前に変えようかな~」と、言う。 「良いね~」「良い名前を考えて呉れよ」と、皆に言われ 「え~っと、え~っと、、」なかなか良い名前が、浮かばず、苦労していると 「シュウで良いんじゃないか?」と、青樹が、言う。 「シュウ?」「鷲って言う字の、別な読み方だよ」 「鷲って、シュウとも読むんだね、知らなかった~」 緋芽も、青樹も、魔法の本以外は、読むのも書くのも日本語だった。 だから、青樹も緋芽も、自分達は、日本人として、造られた思っていた。 「ピーピー、今日からシュウだよ、分かる?」緋芽に、そう言われて 「ピ?」シュウは、首を傾げたが「シュウ」と呼ぶと「ピー」と いつも通りに、返事をする「分かってるみたい」と、緋芽は喜ぶ。 と、言う事で、その日から、ピーピーは、シュウと呼ばれる様になった。 翌日、大きな砂丘を超え、その先を見た皆は 「海だ~~っ」「青い~~」「広い~」と、歓喜の声を上げる。 「島だ、島も見えるぞ」「あれが、夢島?」 夢島は、割と近くに見え「泳いででも行けそうだ」と、緑が言う。 意外に近い様だが、緑以外は、そんなに遠くまでは泳げない。 海を渡るには、船が要る、だが、そんな物は無い。 「どうやって渡る?」「筏を作るしか無いな」 「筏?俺たちは良いとして、馬は無理だろ?」「無理だな、ここで放そう」 皆は、もう足首までの深さしか無い、川を渡って、向こう岸に行き そこで馬を放した、こちら側なら、馬が食べる草も、まだ沢山有ったからだ。 皆は、木が密集して生えている所を、寝場所に決め 筏作りに、必要な材料集めに、取り掛かった。 幸い、近くに生えている木は、軽くて水に浮きやすい木だった。 それを銀の斧で伐採し、同じ長さにして、白が集めて来た蔓で縛る。 青樹は、筏を漕ぐオールを作り、緋芽は、荷物の整理をして 出来るだけ、筏に積む荷物を減らす。 暑くても、頑張ったので、夕方には、筏は出来上がった。 その夜は、残っている肉全部と、緑が、海で獲って来た魚を お腹いっぱい食べ、ぐっすり眠る。 筏を海に浮かべ、荷物を積み、筏の前方は、緑が肩に掛けたロープで引っ張り 青樹、銀、金、黒が、筏の両横でオールを漕ぎ 白と緋芽は、荷物の番をしながら、皆を、応援する。 シュウは、筏の真ん中に立てた柱の横木に止まって、何か来ないかと 周囲に、目を光らせる。 皆の筏は、波も無い穏やかな海を渡り、島へと進む。 ぐんぐん近付く島の大きさに、皆は圧倒される。 砂浜が有る入江から先は、深い森になっていて、その先は、どこまでも高い 山が、連なっている、ここは、本当に島なのか?と、疑う程だった。
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