お供は五匹

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お供は五匹

高い山の上に、さらに高いに囲まれた、盆地のような場所があり、そこに 大きな湖が有った、その湖の傍に、五階建ての、これも大きな建物が有る。 その建物の屋上から、周りを見ていた女の子が 「黒、誰かが来るわ」と、後ろを振り返って言う。 暖かな日差しの中で、寝転んでいた、大きな黒猫が、伸びをして 立ち上がると、黒い衣装を着た、人間の若者の姿になった。 その若者は「誰が、来たって?」と、女の子の傍に行き、下を見る。 「ああ、下の森から来た者達だ、王様に呼ばれたんだろ」 「ふ~ん、あ、湖からも誰か来る」湖からも、若者が歩いて来た。 「あれは、亀族の者だな」そう言われた若者は 緑色の服に、緑色のマントを羽織っていた。 「緋芽(ひめ)様、王様がお呼びで御座います」獣の耳と尻尾を持った侍従が 女の子に、声を掛け「黒様も、御一緒にとの事です」と言うと 恭しくお辞儀をして、下がって行った。 「やれやれ、やっぱり俺も行くのか」黒と呼ばれた若者は 緋芽と呼ばれた女の子と一緒に、下へ降りる。 三階の大広間には、王様と呼ばれる、白い髭の老人が 豪華な椅子に座っていた。 その前に、片膝をついて頭を下げている、四人の若者が居る。 白い服に白いマント、金色の衣装に金色のマント、銀色の衣装に銀色のマント そして、さっき見た緑色の服と緑色のマントの若者だった。 そこへ、黒い服に黒いマントの黒も、一緒に並ぶ。 「揃ったな、それぞれの一族の中の、最も優秀な者達よ、よく来た」 王様はそう言うと「緋芽、ここへ」と、緋芽を呼ぶ。 黒以外の若者は、初めて見る緋芽の姿に、驚きの目を瞠る。 緋色の長い髪、ルビーの様な赤い目、真っ白な肌 『これが、真の人族、、』言葉には出さなかったが、皆、そう思った。 「お前たちの任務は、この緋芽を守って、無事に海の向こうに有る 夢島まで、連れて行く事だ、だが、そこまでの道は無く 食べ物も、それほど多くは持っていけない、自給自足になる。 そして、最も恐ろしいのは、様々な魔獣が出る事だ。 その魔獣から、緋芽を守って、無事に夢島まで、送り届けてくれ。 頼んだぞ」「ははっ、白兎の、この命に換えましても」 「この金弧に、お任せ下さいませ」 「銀狼です、一族の誇りを汚さぬ様、死にもの狂いで頑張ります」 「緑亀と申します、必ず、ご期待に沿って見せます」 「この黒が付いております、どうか、ご心配なく」 五人の若者は、口々にそう言った。 そんな五人を見ながら「とうとう、旅立ちの時が来たのね」 緋芽は、好奇心と不安に揺れ動く気持ちを、押さえていた。 「では、緋芽様は、こちらへ」侍女に案内され、旅の衣装に着替える。 赤い服に赤いマント「何で、赤い服なの」「魔獣と戦う時や、何処に居ても 直ぐに緋芽様だと、分かるようにです」 「ふ~ん、まぁ、皆と同じ格好だから、良いか」 と、緋芽は、くるりと回って赤いマントを翻した。 侍女は、つば広で、これも赤い、とんがり帽子を被せ 金色の杖を持たせる、緋芽は、一応、魔法使いだったが、まだまだ未熟で 小さな怪我を治す、治癒魔法と、簡単な魔法しか使えなかった。
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