caseB 草木好子 ハナ編

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「落ち着いて。話を聞いてよ」 「これが、落ち着いていられますか!」 「……わかったわ。話を聞いてもらえないのなら、  今ここで叫ぶわよ」 「えっ?」  と同時に、人型植物は大きく息を吸い込んだ。  ま、まずい!! 「わかった! わかったから!  話、聞くから! 目立つことやめて!」  ただでさえ低家賃の物件なのに、お隣に聞こえちゃうからやめて!(泣) 「ふーー。やっとお話できるわね。  はじめましてご主人様。私は人型植物よ」 「それはわかったわ……。  でも、どうして私の姿をしているの?」 「それはもちろん、ご主人様が私を育ててくれたからよ」  何気に安直なのね…………。  まあ、いいわ。 「その、ご主人様っていうのはやめにしない? 私は、草木好子よ。  ……あっ、もしかして名前まで同じだったり?」 「いいえ。私があなたなのは、姿形だけよ。  名前はないわ」  名前がないのは不便だ。  いつまでも「人型植物」とか「花?」とか呼ぶわけにもいくまい。 「じゃあ、あなたの名前は……。  そのまま花……ハナ、でいいかしら? 私のことは、好子と呼んで」 「いいわ。よろしくね、好子」  こうして、私とハナの奇妙な同棲? 生活が始まったのだった。
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