caseB 草木好子 ハナ編

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「あーあ。いいよね、ハナは。仕事しなくてもいいんだもんね」  ビール一口、おつまみ少々。  交互に口へ入れながら、愚痴をこぼした。  ハナは、「あらあら。また始まった」とでも言いたげだ。  文句も言わず、意見も言わず、ただ、話を聞いてくれる。  数ヶ月一緒に暮らしているうちに、  まるで双子の姉妹のように思っていた。  ……まあ、ハナはあくまでも植物なんだけど。  以前、足が土に埋まっている部分はどうなっているのかと訊ねたら、 「根っこがある」と教えてくれたし、見せてくれた。  それに、食事は……といっても土にかけるんだけど、  やっぱり水だし、たまに植物用栄養剤をあげる。  足から上の見た目は人間でも、  残念ながらやはりハナは植物なのだ。 「ハナが人間だったらなー……」  ぽつり、と独り言のように言った。 「私が人間だったら?」 「一緒にお出かけしたり、美味しいもの食べて 美味しいねって、言い合えたりするじゃない?」 「本音は?」 「そして、たまにでいいから仕事で入れ替わってほしいいい!!」 「正直に言ったわね……」 「いいのよ、どうせ無理なんだから!  夢見たっていいでしょ?」  だんだん酔いが回ってきて、ゆっくりと机に伏せた。 「そうね……。たしかに、仕事を代わるのは無理ね」  ……ん? どういうこと? 「私が、普通の人間のように暮らせる方法が、ないわけではないの」  …………えっ!?  机に伏せていた体を、勢いよく起こした。  今ので、一気に酔いが覚めた!!
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