caseA 草木好子 植木編

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「へ、変なって……。失礼ですね!  あなたが育てたんじゃないですか!」 「わ、私が、育てた…………?」 「そうですよ。この数日間、種から育ててくれたじゃないですか」 「う、うそよーーーー!!(涙) 私が育てていたのは、植物よ!?  あなたみたいなおじさんじゃないのよ!?」 「私はれっきとした人型植物です! その証拠に、ほら!」  おじさん? は、自分の足元の土を少し掘り返した。  目を疑ったが、そこには足ではなく、植物の根がしっかりと埋まっていた。  数分後、落ち着きを取り戻した私は、まずこのおじさん植物をどうしようかと悩みながら、いくつか質問をした。 「あなたが、人型植物だという事はわかったわ……。  でも、それならなぜ、おじさ……壮年の姿なの?」  偏見かもしれないが、普通、もっと幼かったり、自分の姿に似たりするものではないのだろうか? 「それは……。私にもわかりません……。  私は人の形こそすれど、今開花したばかりの植物です」 「じゃあ、私に種をくれたご婦人の事は?」 「ご婦人……? いえ、存じません」  ああああ、どうしろって言うのよーー。  私は、頭を抱えた。  それから数日間、種をくれたご婦人に話を聞けないものかと、帰路途中で毎日姿をさがしたのだけれど……。あれ以来、ご婦人の姿を見る事はなかった。  まったく、なんて物をくれたのかしら!?  植物とはいえど、さすがに人型のもの……しかも知能ありのものを捨てるのは忍びなく、おじさん植物と、奇妙な同棲? 生活が始まるのだった。  いつまでも、おじさんと言うのもなんなので、名前をつけることにした。  うーん、うーん、おじさんっぽい名前……。  植物……花……  花太郎……花男……。  ………………。  ダメだわ。  私ってば、ネーミングセンスが壊滅的ね。  自分のセンスのなさをこれほど呪ったことはない。  そうよ、別に下の名前にする必要なんてないんだわ。  見た目堅苦しいおじさんだし、苗字でも……。 「植木さん、ってどう?」 「そのままですね」 「いいじゃない、わかりやすくて。  はい、植木さん! 決定ーー!」  私は安直に名前をつけたが、  植木さんはなんとなく嬉しそうだった。
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