魔法書探し

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魔法書探し

 晴れた空の下。  初春のまだ少し冷たさが残る風が吹く中、イアンとセリスは、隣町の図書館への道を歩いて行く。  現在二人が歩いている、この通りは『クライド通り』と言い、この大通りのずっと先に図書館がある。  また、クライド通りは、ブティックや、雑貨屋が多く建ち並び、人通りも多い。 「どんな魔法書なんだろうね。」 「呪いに(まつ)わる本だからな、禍々しいのかもな」 「えぇ〜。それはなんか嫌だな。」 「それにしても、何で隣町の図書館なんだ。城の書庫でもいいはずだが。その方が厳重なわけだし。」 「うーん。城で管理出来ない理由でもあるのかな?」 セリスは、そう言いながらイアンの顔を心配そうに見やる。 話しながら時折顔色を窺うように見てくるセリスに、イアンは苦笑いを浮かべる。 「お前は、心配しすぎなんだよ。」 「だって!あんな酷い怪我だったし‥。凄い辛そうだったから。」 「俺はそんなにヤワじゃない。」 「知ってるけど。心配な物は心配なの。」 不貞腐れたように言うセリスに、イアンは小さく笑みを溢す。 そんな二人を影から見てる人物がいる。 そうとは知らず歩く二人。    城下町の賑やかな大通りを抜け、次第に徐々に人が少なくなり、閑静な住宅街へと風景が変わった。 閑静な住宅街をしばらく歩くと、大理石で作られた平屋の建物が遠目に見えた。 その建物が図書館である。  二人は、魔法で出来た本のオブジェを通り抜け、館内に入る。  館内は、渡り通路があり、その通路の天井はステンドグラスで館内を照らしている。  何百台と設置された、天井から床まであるアンティーク調の本棚には、書籍がぎっしりと並んでいる。  エルヴェリア城にも書庫はあるのだが、それよりも何倍も広い。 「凄い!本がこんなに沢山!」 「お前、本当に昔から本が好きだな。」 「まぁね。色んな事を知れるから楽しいし!」 「何でも良いけど、魔法書探すぞ。」 イアンとセリスは、二手に別れて魔法書を探し始める。  とはいえ、広い図書館で、隅々まで埋め尽くされた書籍の中から一冊の魔法書を探すのは至難の技だ。時間ばかりが過ぎていく。 セリスは一度、探すのを止めて別の場所を探しているイアンの所に向かう。 「あった?」 「いや、こっちにはまだ見つからない。そっちは?」 「こっちにもないよ。どこにあるんだろう‥。」 「誰にも分からない場所に隠してあるのかもな。」 他に探していない場所を二人は歩いて回る。 すると、とある場所を通りすぎた時だった。 セリスが何か違和感を覚えた。彼女は立ち止まり首を傾げ、違和感のある場所を観察するようにじっと見やる。 セリスが立ち止まった事に気付いたイアンは、彼女に声をかけた。 「どうした?」 「いや、なんか彼処だけ変な感じがして‥」 「どこだ?」 セリスが受付のすぐ横を指差し、イアンがそこを見る。すると、他の棚に比べると少し背が低い棚があった。そして、本棚と本棚の間に隙間があり、そこから奥に入れそうである。 「確かに他とは違う棚だが、受付けの近くだからじゃないのか?」 「そうなのかな?」 何かが引っかかるのか、セリスは再び首を傾げながら棚を見やる。 「ねぇ、あそこまだ探してないよね?」 「あぁ、そうだな。」 「じゃ、ちょっと行ってくる!イアンは少し休んでて!」 「あ、おい!」 イアンの静止の声も聞かずに、セリスは受付けの横に近寄る。そして、受付けの司書に声をかけると、身を滑り込ませるように入っていった。 (ったく。俺が休んでたら二人で来た意味ないだろ) イアンは、やれやれと溜息をついた。 セリスが奥へ入ると、そこは薄暗い部屋だった。滅多に人が入らないのか埃っぽく、湿気臭い。  部屋の中を、彼女がョロキョロしながら歩いていると、高めの棚の一番上に古びた鉄の箱を見つけた。 台になりそうな物を探して、それに乗ると、箱を下ろし開けようとする。 しかし、なかなか開かない。どうやら高度な魔法で鍵がかけてあるようだ。  セリスが詠唱を唱える。  すると、蓋がガチャと開き、中には黒字で『忘れられた魔法書』と書かれた赤紫色の魔法書が入っていた。 「あった!これだ!」 セリスは、その本を持ってイアンの所へ戻った。  しかし、そこにイアンの姿はない。 怪訝に思ったセリスは魔法書を持って図書館を歩き始める。 (イアン、どこ行ったんだろ。休んでてって言ったのに。) すると、ドォン!という衝撃音が響いた。 (何、今の音!?もしかしたらイアン?だとしたら急がないと!) 彼女は、焦燥感に駆られ走り出した。
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