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4.微かな疑念
早く、雨降ってくれよ。
空を見上げて恭平は思う。
会いたいと心から願うのは、たぶん高校の頃より、さらに彼女のことが好きになっているから。
次、会ったら伝えたいのに。
ずっと言えなかった大事な言葉を。
思いが天に届いたのか、昼すぎから空に雲がかかり、しとしとと雨が降り始めた。
「喜多嶋さん」
水たまりで靴が濡れるのにも構わず、アイボリー色の傘をさした美雨に駆け寄っていく。
「坂口くん」
白い半袖ブラウスに小花柄のロングスカート姿の美雨が、いつもよりさらに綺麗に見える。
半袖のTシャツにジーパンとか、告白しようって思ってた割に無頓着すぎる格好だな、俺。
「今日の服、すごく似合ってる」
そう素直な気持ちを口にすると、美雨は目を輝かせて微笑む。
「ほんと?ありがとう」
「中に入ろう」
華奢な背中にそっと触れた恭平の左手を、彼女は自然に受け入れてくれた。
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