5.突然の別れ

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カフェの外に出た時、雨は上がっていた。 恭平は美雨の手を引いて坂道を登る。 「こっち」 誰もいない児童公園。 藍色とほんの少しのオレンジが混じった夕暮れの空。 濡れてなければブランコ乗ったのに、と笑う美雨。 「喜多嶋さん」 ……今、目の前にいる君は。 「君は誰?」 あの日、“美雨”と呼ばれていた彼女の髪色はブラウンで、眼鏡もかけていなかった。 じゃあ、俺が会ってた“喜多嶋美雨”は、一体誰? しばしの沈黙をはさみ、美雨は口を開いた。 「……嘘ついててごめん」 今は涙で潤んでいる眼鏡の奥の瞳。 ずっと前から知っているような気がするのは何故だろう。 「どうしても、が好きって伝えたかっただけなんだ。……信じてくれる?」 「信じるよ。だから……」 だからまた雨の日にあのカフェで会おう。 恭平は言葉にすることが出来なかった。 美雨の身体が足元から徐々に透き通りはじめていたから。 「待っ……」 恭平は必死に手を伸ばす。 涙を流しながら美雨は微笑む。 「さよなら。……ありがとう」 指先が届く前に、美雨の姿はかき消えた。 淡い光の粒だけを残して。
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