6人が本棚に入れています
本棚に追加
……なんで今さら、こんなこと思い出してるんだろう。
そうだ、今夜は雨が降っていた。
ずっと両親に伝えるか否か、そればかり考えていて、気がついた時には車のヘッドライトがすぐ目の前に迫ってた。
もしかして、このまま死んじゃうんだろうか。
本当の気持ちを伝えないままで。
……会いたい。
彼に、もう一度だけでも。
『あなたのその願い、叶えてあげましょう。雨が降る日にだけ、彼に会わせてあげます。あなたが気持ちを伝える、その瞬間まで』
次の瞬間、僕は雨が降りしきる街角に立っていた。
ショーウィンドウに映るのは、何故か“喜多嶋美雨”の姿だったけれど、走る彼を見つけて、そんなことはどうでもよくなった。
恭平、……恭平!!
彼の背中を追いかけて、僕は走り出す。
最初のコメントを投稿しよう!