6.もうひとつの片思い

2/2
前へ
/20ページ
次へ
……なんで今さら、こんなこと思い出してるんだろう。 そうだ、今夜は雨が降っていた。 ずっと両親に伝えるか否か、そればかり考えていて、気がついた時には車のヘッドライトがすぐ目の前に迫ってた。 もしかして、このまま死んじゃうんだろうか。 本当の気持ちを伝えないままで。 ……会いたい。 彼に、もう一度だけでも。 『あなたのその願い、叶えてあげましょう。雨が降る日にだけ、彼に会わせてあげます。あなたが気持ちを伝える、その瞬間まで』 次の瞬間、僕は雨が降りしきる街角に立っていた。 ショーウィンドウに映るのは、何故か“喜多嶋美雨”の姿だったけれど、走る彼を見つけて、そんなことはどうでもよくなった。 恭平、……恭平!! 彼の背中を追いかけて、僕は走り出す。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加