エピローグ

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しばしの沈黙を挟んで、邦彦は口を開いた。 「……なんでわかったの?」 「邦彦が事故に遭った時期を聞いて、全部が繋がった。確証はなかったけど、当たってたんだろ?」 理由なんてどうでもいい。 あのカフェで会ってた時間も、涙を流して伝えてくれた“好き”も、全部真実だったって信じてる。 「どうしても俺に好きって伝えたかった、って言ってたのも本気なんだろ?」 「あの日言ったことに全部嘘はないよ」 邦彦は苦々しげな笑みを浮かべた。 「ごめん。こんなこと言われたら引くよね」 自虐的な響きを帯びた邦彦の言葉を止めたくて、恭平は人差し指で唇に触れる。 「そんなこと言うな」 俺の“好き”は友だちとしての“好き”で、邦彦の言うそれとは違う。 俺たちの“好き”は、永遠に交わらない。 ……だけど。 「気持ちには応えられないけど、好きって言ってもらったのは嬉しい。それに友だちとして好きなのは本当だから、邦彦が生きててくれて良かったよ。マジで」 だからせめてこれからは、親友として傍にいる。 空気がきれいで、いつも穏やかな時間が流れてて、良くも悪くも隣近所との繋がりが強いこの町で、邦彦をひとりぼっちにしないように。 「これからはちょくちょく連絡取り合おうぜ」 ふふっ、と邦彦は穏やかに微笑む。 その笑みはやっぱりあのカフェで向かい合ってた“美雨”に似ていた。 「友だちとして?」 「そう。俺たちはずっと親友だ」 差し出した小指に邦彦は小指をからめる。 そよ風がカーテンを揺らす。 ふたりが窓の外を見ると、雨あがりの空に七色の虹がかかっていた。 【完】
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