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「お待たせいたしました」
美雨の前には、つやつやとしたフルーツタルトとホットの紅茶。
そして恭平の前には、なめらかプリンとアイスコーヒー。
「わあ、キレイ!」
目を輝かせながら控えめにはしゃぐ美雨。
こんなちっこいデザートと飲み物だけで1000円するとかありえねえ。正直そう思っていたけれど、こんな笑顔が見られるなら十二分にありだ。
「いただきます」
ふたり揃って手を合わせてから、デザートを口に運ぶ。
「……おいし」
「……うんまっ」
なめらか、ってかとろりとした口あたり。
こってり濃厚な甘さ。
プッチンするやつとは全くの別物だなこれ。
なにかしゃべるとこの美味しさが逃げていってしまう気がして、ついつい会話がおろそかになる。
ふたりの間に流れるのは沈黙ばかり。
だけど不思議と居心地はいい。
やっぱ俺、今も好きなんだな。喜多嶋さんのこと。
丁寧にタルトを食べる美雨に見とれながら、恭平は思う。
告白出来ずじまいで終わった初恋の人と、広い東京の街でばったり会えるとか、こんなチャンス二度と巡って来ないかもしれない。
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