1.偶然の再会

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「喜多嶋さん」 このまま終わらせたくない一心で、恭平は言葉を継ぐ。 「もし迷惑じゃなければ、また会いたいんだけど……どうかな?」 紅茶のカップをソーサーに置いた美雨は、静かに微笑む。 「うん。私もまた会いたい。次また雨が降ったら、このカフェで会お。……約束」 差し出された右手の小指に小指をからめる。 指きりげんまん、なんていつ以来だろう? 恭平の胸の鼓動は否応なしに高まる。 なるべく長く美雨と一緒にいたくて、自然とプリンを食べるスピードは落ちた。 会計を終えてカフェの外に出た時も、まだ雨は降り続いていた。 「それじゃあ、またな」 「うん。また会おうね」 ひさしの下で手を振って別れたふたりは、雨の街へと駆け出していく。 なんで、次また雨が降ったらなんて条件なんだろう? 疑問に思わなかったわけじゃないけれど、それを上回る期待感が頭の中を占めている。 東京に来てから初めての、退屈な毎日が変わりそうな予感に、恭平はなんだかわくわくしていた。
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