2.曖昧な約束

1/3
前へ
/20ページ
次へ

2.曖昧な約束

それから数日、雨は降らなかった。 今日こそ、雨降ってくれよ。 恭平の願いが通じたのか、その日の天気は朝から雨。 バイトは休みだけれど、美雨との約束がある。 講義が終わった直後、恭平は教室を飛び出し全速力で駅まで走った。 今日こそ連絡先を交換しよう。 そう心に決めて、紺色の傘をさした恭平はカフェへと向かう。 カフェのすぐ近く、道行く人たちの邪魔にならない場所で、アイボリー色の傘をさした美雨が立っていた。 「ごめん。待った?」 「ううん。私もさっき着いたばっかりだよ」 ふたりはひさしの下で傘をたたみ、軽くゆすって雨粒を落とす。 くるくると柄の細い傘を巻いて、傘用のビニールに納める美雨の仕草は、とても綺麗だ。 先に店内に入るよう促し、恭平は美雨の後に続く。 「いらっしゃいませ!」 店員の明るい声がふたりを出迎えた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加