6人が本棚に入れています
本棚に追加
「喜多嶋さんは、東京来てからどう?」
「うーん、ひとり暮らしにようやく慣れたとこだし、まだ緊張してるかも。ほら、東京だと星があまり見えないじゃない?そういう時、無性に地元が恋しくなるの」
恭平の脳裏に、故郷の空に輝く星たちを見上げた記憶がよみがえる。
「でも受けたい講義もたくさんあるし、なんだかんだ充実してるかな。……坂口くんは?」
空気がきれいで、いつも穏やかな時間が流れていた地元での生活。
恭平にはそれが窮屈なものに感じられて、親の反対を押しきって東京に出てきた。
東京に来たら、解放感のある刺激的な毎日が送れるような気がしていたけれど、実際は大学とバイト先と自宅の往復だけで、交友関係も広げられない退屈な毎日。
「ん……まあ、ぼちぼち、かな」
もやもやとした気持ちと一緒に飲み込んだチーズケーキは、さきほどと変わらずやっぱり美味しかった。
最初のコメントを投稿しよう!