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3.本当の気持ち
翌日も朝から雨が降っていた。
今日も美雨に会える。
なのに恭平の心はちっとも弾まない。
なんで俺は、喜多嶋さんに本当のことを話せなかったんだろう?
「坂口くん」
なんとなく後ろめたくて、美雨の目をまっすぐ見られない。
「どうしたの?」
「ん?……ああ、今日バイトだから1時間しか一緒にいられないの、残念だなと思って」
必死に笑顔を作った恭平は、先に店内に入るよう美雨を促す。
注文をとった店員が席を離れていくと、気遣わしげな表情をした美雨が口を開いた。
「坂口くん、大丈夫?」
「え?」
「なんか元気ないから」
本気で心配してくれているのがわかって、恭平の中で罪悪感がふくれあがる。
「違うんだ。あの……ごめん。昨日本当のことを言えなくて、それが気になってただけで」
「本当のことって?」
「東京での生活のこと。ぼちぼちって言ったけど、本当は違う」
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