自由な天気

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自由な天気

「晴れてる……」  この日は夢で飲んだ『アシタ天気』のおかげなのか、天気予報でも今日は雨のはずが晴れていた。 「……仕事行こう」  冷静に考えてもアレは夢だったはず。会社でも今日の晴れは久しぶりでその日差しと日光に皆が喜んだ。  私は正直、気持ちが半信半疑で複雑に感じる。だって夢なのに、それとも私に特殊な力でも宿ったのかとおどおどしてしまう。  しかし翌日は天気予報のとおりまた雨。昨日のようには行かないかと苦笑いの社員たちの中で私もそれに合わせて苦笑う。  そんな今週末に、私は待ちにまち続けた遊園地にめったに会えない親友と出かけることになった。だが、その日はやっぱり雨が降る。なのでてるてる坊主にお願いしながら、 「お願い、また『テルテル・ハート』に行かせて……ぐう~」  眠ることにした。 「――はっ」 「やぁ、愛依」 「あんたは藍浦てるてる坊主っ、やったまたこれた!」 「願って寝てくれれば何時でも来れるよ」 「へ〜、あっ、そうだ、お願いがあるの」 「知ってるよ、でも寿命縮めちゃうけど〜」 「そうなんだけど〜」  私としては寿命が減るのは嫌だけど、どうしても楽しみな遊園地を太陽の下で思いっきり親友としゃぎたい。 「6時間だったわね、わかった」 「じゃあ付いてきて」  今の時代人生100年なんだからその中の6時間くらいどうってことないでしょ。その間にも技術がもっと進化すれば150年でも200年でも生きていけるはずだし。  物事を前向きに捉えて私はコンビニ『テルテル・ハート』で『アシタ天気』購入して飲んでまた眠る。  すると親友と出かける日、 「やったー、晴れた!」  ちゃんと太陽が堂々と顔を出していたのだ。これはもう効果は疑う余地なし。  効果に確実性を持った私はこれ以降も度々『アシタ天気』を飲むようになり、晴れも増え遊ぶ事も増えたの。さらにはそのプラスで1時間寿命が減る『アシタ虹』なんて物も飲んで見たりと、都合よく雨を晴れにしていった。  しかしそうすると天気は気まぐれ、雨が降らない日もやってきて私がドリンクを飲んだ日にあわせてテレビやネットのニュースで今年の雨量は前年に比べて少ないと流れ始める。 「――いや〜、毎年この季節は雨がたくさん降るんだがね〜、今年は少なくて困るよ〜」  調子に乗り過ぎたかな、これ以上はやめよう。 「うん、もう十分楽しんだし」  ところが6月が終わって7月になっても天気予報では全曜日すべて雨、かつてないほどの異常気象。 「え〜、結局やっぱり雨〜……我慢してきたけど、仕方ないか」  こうなるとは思ってなかったし、2週間くらいドリンクを使わなかったんだから良いだろうとてるてる坊主を握って夢の世界へ。
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