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雨よ降れ
「――ひさしぶり〜、藍浦てるてる」
「愛依〜、さみしかったんだよ〜」
「ごめんね〜、さあ行こう」
「うん」
藍浦てるてる坊主に訳を話して2週間近くも会いに来なかった事を謝ると、機嫌を良くしたのかニコニコしてまたコンビニ『テルテル・ハート』で『アシタ天気』を購入した。
これでまた晴れる日々にとニヤつく。
「楽しそうだね」
「だって〜、天気を操るなんて、なんか神様にでもなったみたいでしょ」
「愛依が晴れにしてるって皆しらないからね」
「ヘヘっ、ホント便利〜……ん?」
「あっ、愛依っ、ダメッ!」
私は入り口を出てふと左手側から声がして何となく向かって歩く。
「何かの声、それも複数?」
……雨……れ。
「てるてる坊主……」
「「あ〜っめよっ降れ〜、あ〜っめよっ降れ〜、あ〜っめよっ降れ〜」」
6、7人のてるてる坊主が円を作るように回って
る。まるで儀式みたいに『雨よ降れって』でもそれって……。
「藍浦てるてる、これってなにかの遊び……」
「見ちゃったね」
「え、うん」
「……これはね雨を降らす儀式だよ」
「へ? 雨を降らすって〜、てるてる坊主は雨を止ませるほうでしょ」
「……そうだよ……でもね」
私の後ろにいた藍浦てるてる坊主はフワッ仲間の方へ。
「でもね、雨が降らなかったらてるてる坊主をみんな作らないでしょ」
「まあ、そうだけど……って、ちょっと待って、私は寿命を減らしてまでドリンク飲んでたのに、雨を降らしてたなんて、酷いわよ!」
「黙っていたことは謝る、ごめんなさい。けれど、僕達も雨を止ますのが役目なんだよ、降らなきゃ存在価値のない物になってしまうんだ!」
「藍浦てるてる……」
「それと……」
突然、他のてるてる坊主がこっちを向き嫌な予感と気づけば後ろにもてるてる坊主が50、100,どんどん増えてくる。
「ちょっ、ちょっとっ、なによこれっ」
真顔のてるてる坊主が沢山は怖くなる。
見〜たな〜、み〜たな〜、ミ〜タナ〜、み〜タナ〜、み〜たナ〜、
「バレちゃった以上、このままにしとく訳にはいかないんだ」
「え、ええっ、どういうこと……」
「サヨウナラ、やサしイ愛依」
みんな、ヤッチャエ……。
「そんなっ、ちょっとっ、キャアァァァーッ」
もうだめと、周りが真っ暗になった……。
――私は目を覚ます。そこはもちろんベットで起き上がると頭が何だかモヤモヤ、酒のんだっけか。
「う〜ん……あっ、しごと、仕事」
颯爽と着替えてドアを開くと、
「あっ、晴れてる〜、珍しい〜」
空は太陽が出て少し暑い。たしか昨日は天気予報では雨だったはずだけどこれはラッキー。
「てるてる坊主……」
何故かじっと見てしまう。
「……けっこう効果あるのかも……行きますか」
晴れているのはきっとてるてる坊主のおかげ、つくってみるもんだなあと思いつつも、やっぱり少しのモヤモヤを感じる。でもそれは、いままで雨で気持ちが曇っているのだろうと考え今日も会社へと足を運ぶのだった……。
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