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鈴之介(すずのすけ)君じゃないか」 兼貞が名を呼んだ。 「ごきげんよう、皆様。  紹子嬢もご機嫌麗しく」 “鈴之介”と呼ばれた 長身の男は“晋太郎”と呼んだ、 くりを助けた男の脇に立った。 「わたくしの親友が  手荒な挨拶をして、  …クっクククク」 泥と血で汚れた鵜沼をみて 笑いが止まらない鈴之介に 「この下衆は、鈴さんの  お知り合いだったのか」 「ああ、下手な乗り方の  馬から降りて、彼女に  一目散に向かう姿は  『あの鼠の糞にも   満たぬ“モチモノ”で   有名な鵜沼さん』だと  すぐに気づいた」 鈴之介に“鼠の糞にも満たぬ”と 夫を酷評された鵜沼夫人だが、 見に覚えは重々で 顔を赤らめて俯く以外ない。 「晋太郎と朝の散歩を  しているところに  この“チン事”に  出くわしましてね、  鵜沼さん程度なら  僕が出るまでもないから  僕は中へ人を呼びに  行ってたわけです」             
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