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上流階級に慣れた執事ですら
晋太郎の毅然たる様子には
気を引き締めて椅子を引いた。
「改めて御紹介します。
僕と同じ帝大に席を置く
八嶌晋太郎です」
「お招き光栄に存じます、
今泉男爵さま」
丁寧なるお辞儀からは
あの日の“荒い姿”は
まったく消えている。
「こうしてキチンとすれば
なかなかの美男子でしょ?」
「ああ、鈴之介くん、
君の群れ成す
“二本松会”でも
これ程の方は…」
兼貞の言う“二本松会”は
二本松伯爵の率いる一派で
兼貞達の鳳蔭会以上に
良識ある大人からは
嫌われる淫蕩派。
「残念ながら今泉さま、
僕はそちらの会には
所属していない平民です」
“平民”と言いながら
女みたいな瓜実顔に
力強い気品と不敵な笑み。
それは自信に満ち溢れ、
厩で始めて会った時よりなお
紹子の胸を高鳴らせるのだった。
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