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大正さまの御代になり
モガにモボなる言葉が生まれ、
洒落た建物に女性の外出。
世の中が明るい変化を
見せているようではあったが、
明るさの後ろは影がある。
平民宰相が登場し、
人が人らしく生きるを
唱えることが多くなっていた。
けれども
(わたくしが“人であった”…
そんなことがあるかしら)
先頃の紹子は新聞を読む度
ついぞ思ってしまうのだ。
もうすでに家宝の多くを
売り食いしていた泉橋寺家。
“労働”などという言葉を
知って育ったことない父は、
紹子が幼い時分から
“よい買い手”を物色していた。
(所詮わたくしも“モノ”)
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