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この日は
「牧場で仔馬が産まれた」
と、連絡を受けた兼貞が
「一緒に見にゆくかい?」
と、紹子を誘い、
「暇だから僕らも」
鵜沼男爵夫妻も同行、
馬車に乗り込んだ。
東北の入口にも
夏を知らせる風が
窓から心地良く流れ、
他愛もない世間話と
景色に紛れ、紹子の憂鬱も
やや晴れ間が見える緑が、
那須の道に溢れていた。
兼貞の所有する牧場で
仔馬を観たあとに
「ピクニックと参りましょ」
鵜沼夫人が言うので
「なら、テーブルの支度を
させるように申しつけます」
紹子が使用人を呼ぶと、
三人ほどの男集に混じって
紹子と同じ歳くらいの
美しい娘も姿を現した。
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