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目覚める前
「晴也…。お願い、目を覚ましてよ」
眠り続ける晴也のそばで、私は涙を流しながらそっと彼の手を握った。
まさか晴也が死のうとするなんて思わなかった。
私との結婚が、そんなに嫌!?
晴也との結納の日取りが決まった時、嬉しくて嬉しくて神様に感謝した。
幼い頃からずっと好きだった晴也と結婚できる。
それは晴也の両親の死と、うちの事業の低迷があってこその結果だけど、私は真人と結婚するものだと思っていただけに、この運命に喜びを隠せなかった。
それなのに、晴也は私に言った。
「僕は亜弓と結婚しても、愛することは出来ないと思う」
私と晴也との仲は至って良好だったので、まさか私が振られるとは思っていなかった。
「出来れば、亜弓のほうから婚約を取り消すように言ってくれないかな」
そんなの嫌だ。
なんとか引き止めたい。
結婚してしまえば、きっと愛情が芽生えるはずだ。
「だったら、真人に協力してもらいたいんだけど…真人が協力してくれるって言ってくれたら、私がお父様にお願いしてみるわ」
この提案は晴也にとって願ってもいない話だっただろう。
だって、きっと晴也は真人が未だに私の事を好きだと知っている。
その真人が婚約取り消しを協力しないなんて思いもしなかったのだろう。
でもね。
真人が私を襲おうとしたあの日から、真人は私に頭が上がらないの。
まぁあの日に限った事ではないんだけど…。
協力する、なんて一言でも言ってごらんなさい。
真人が私にしてきたことの数々を、ご両親にぶちまけてやるんだから。
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