雨が降ってきた

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雨が降ってきた

その連絡は、会社帰りの途中だった。 もう少し早く連絡が来ていれば、家に戻らず会社から直接向かえたのに… そう母を責めても仕方がないことなのだけど、あまりにもタイミングが悪すぎた。 母方の伯父は、長患いをしていて、もう長くないことは、聞かされていた。いつでも来られるよう準備だけはしておくようにとも言われてもいた。 伯父ではあるけれど、子どもがいないため、私を実の娘のように可愛がってくれていたから… もう数駅で最寄り駅に着くという頃、伯母と母から連絡が来た。 伯母からは、今晩が峠らしく、伯父が私に会いたがっていると。出来れば、早く来て欲しいと。 母からは、もう伯父は持ちそうにないから、会社にしばらく休むことを連絡しておきなさいと。 私は、急いで携帯から飛行機の予約をした。飛行機の時間に間に合うには、ギリギリの感じだった。 電車が駅に着いた。 改札を出ると、雨が降っていた。 参ったなぁ…。 タクシー乗り場にはもう列が出来ている。 かなりの降りだけど、走って行くしかないか、どうせ着替えるし、家に着いたらすぐタクシーを呼べばいい、と走り出そうとした途端、誰かに呼び止められた。 「あの…、よかったらビニール傘友だちから貰った物なので返さなくていいんで、使って下さい。カバンよりかは濡れないでしょ。」と。 押し問答している時間も惜しいので、好意に甘えることにした。 「必ずお返ししますので。」とそれだけ言って、傘を差して小走りに部屋に向かった。 眼鏡をかけた、優しそうな男性(ひと)だったなと思った。焦る気持ちが、なぜか少し落ちついた。 部屋に着くと、タクシーを呼び、直ぐに着替えた。 もしもの時の荷物は、既にキャリーバッグに詰めてある。 会社の上司にも連絡し、しばらく休むかもしれないことを伝えた。 見苦しくない程度に部屋を片付け、戸締まりを確認する。 床にタオルを広げて、借りたビニール傘を広げて干しておく。 バックとキャリーバッグを持って部屋を出て鍵をかけ、アパートの玄関先に出たところで、ちょうどタクシーが来た。 「駅までお願いします。」 飛行機には、間に合いそうだった。
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