忘れた頃に…

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忘れた頃に…

もう、駅からの連絡はないと思っていた。 と、言うより、仕事が忙しく、あの日のことは忘れていた。はなから期待もしていなかったことだし… 僕は、東京都下のあるメーカーの工場で働いていた。 朝の始業は早く、昔ほどではないが、残業もそれなりにある。 カレンダーは一応週休二日制だが、忙しくなれば、休日出勤は当たり前のようにあった。 その日も疲れて部屋に戻り、携帯を開くと、不在着信と留守電のメッセージがあった。あの、駅からだった。 傘を預かったこと、伝えたいことがあるので、折り返しの電話が欲しいとのメッセージだった。 「もしもし、今日そちらから傘の件で留守電にメッセージをいただいたものなんですが。折り返しの電話をということだったので、お電話したのですが。」 「折り返していただき、ありがとうございます。傘は確かにこちらでお預かりして、貸し出し用にさせていただきます。 それで、傘を持って来られた方が、お礼の品も持って来られたので、『こちらの駅にはもう来られないそうです』とお伝えすると、ぜひお礼をさせていただきたいので、連絡を取ってもらえないだろうかとおっしゃるので、お電話した次第です。もし、差し支えなければ携帯番号を先方にお伝えしますが、個人情報なので…。」 「そうでしたか。それでは、僕のlineのIDをお伝えしますので、もしその方と連絡が取れるのであれば、そのIDをお伝え下さい。よろしくお願いします。わざわざご連絡下さりありがとうございます。」 こうして、僕と彼女はlineで繋がり、 ふたりの住まいの中間地点の駅で待ち合わせすることになった。
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