82人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや~、殿下に怒られてしょげた護栄様は見ものだったよ」
「浩然」
「美星にもこてんぱんにされて」
「浩然!」
「怒っても今更ですって。あはは」
浩然はけらけらと笑った。とても真面目で、色白で線が細いので薄珂から見れば儚げな印象だった。護栄があれほど信頼しているのなら、同じくらい気難しい人物なのかと思っていた。
だが浩然は上司でもあり誰もが恐れる護栄を愉快愉快と笑い飛ばしている。
(浩然様ってこういう人だったんだ)
まるで友達同士がじゃれ合ってるようで、護栄は悔しそうに唇を噛んで浩然を黙らせようとじたばたしていた。
見たことも無い護栄の一面はとても人間味があり、薄珂は思わずくすっと笑ってしまう。それに気付いたのか、護栄は急に服の乱れを正しこほんと咳払いをした。
「浩然が国葬の責任者です。あなたは補佐をして下さい」
「ほ、補佐?」
「護栄様。そんな堅苦しいこと言わないの。国葬を教材に宮廷の仕組を勉強すると思えばいいよ。教えてあげるから大丈夫」
「はい。よろしくお願いします」
浩然はぽんっと軽く薄珂の背を叩き、くるりと護栄を見るとにやりと笑った。それだけで浩然の言いたいことが分かったのか、護栄はぷいっと背を向け自分の机へと戻ってしまった。
「護栄様が教育すると十日で辞めちゃうからやらせないことにしてるんだ」
「厳しそうですもんね」
「必要以上にね。さて。じゃあまず宮廷の組織図から説明しよう」
最初のコメントを投稿しよう!