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第三十一話 牙燕将軍の見た未来
今日は立珂と共に獣人保護区へ遊びに来ていた。
烙玲と錐漣が野生の獣と共に獣人保護区全域の警備を始めたので様子見だ。
「猫いっぱい! にゃー!」
「猫立珂だ! 可愛い! もっかいやって!」
「にゃー!」
立珂は慶都と一緒に集まっている野生の猫とじゃれ合っている。
小動物と暮らしたことのない立珂には新鮮な光景で、ぎゅうぎゅうと猫を抱きしめている。
獣人の子供たちも野生の獣が増えるのは嬉しいようで、子供たちはどんどん集まって来ていた。
「鼠は嫌がる人もいるから人目に付かない場所を担当させてる。人がいる場所は愛玩動物で」
「うん。いいね。とても警備だとは思わないよ」
「正真正銘ただの猫だからな」
華理を参考に野生動物の警備を敷いたがこれは大成功だった。
獣人は野生動物より優れていると思っている者が多い。知能を持ち人間同然の生活ができるからだ。
しかしその反面野生に及ばないところもあり、その最たる例が警戒心だった。
人間と共生する獣人は人間を敵と見なさなくなっている。だが野生動物にとっては敵意を持っていれば同族も異種族も全て敵で、常に警戒心を持っている。つまり野生動物を警備に立てるのは警戒心の補填になるのだ。
しかし言語が異なる野生と意思疎通を図ることはできないのでそれは叶わなかった。
だが烙玲と錐漣は違う。里の大人たちが言うには、他にも同じ能力を持つ者もいるが明確な会話はできないそうだ。
ましてや頼みごとができるほどの信頼関係を築くなんて夢のまた夢。まるで異次元の話らしい。
里の大人は二人を見て感嘆のため息を吐いた。
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