第三十一話 牙燕将軍の見た未来

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「さすが牙燕将軍の育てた子らだ。頼もしい」 「ああ。先々代皇の想いも何も無かったことになるかと思ったが、牙燕様がいらっしゃるならそうはならないな」 「何。我らは牙燕様のご意向に沿うだけだ。もはや当時を語れる方は牙燕様だけになってしまった」 「閃里様と莉雹様もいるよ。皇族に仕える家系だったんでしょ?」 「どうだかな。奴らは結局天藍殿に付いた」 「生き延びる策だったのは分かっている。それでも宋睿や天藍に阿るのはあるべき姿ではない」  閃里と同じことを言われて薄珂は息を呑んだ。  宋睿が悪者として扱われるのはよく聞くことだが、天藍を敵視する国民はいない。宋睿が優遇した獣人でさえ「天藍様が皇太子になって良かった」という者ばかりだ。天藍を敵視するのは宮廷のごく一部でしかないと思っていた。 (里のみんなが大切なのは長老様なんだな。皇族についてはどう思ってるんだろう)  これも薄珂の知らないことの一つだ。里の大人は蛍宮の歴史を知り、そして逃げた者だ。  そんな彼らが薄珂が皇族の生き残りと知ったらどう思うのだろう。  それを聞くのは怖かった。せっかく立珂を可愛がってくれているのに、権力に目がくらみ利用されるような事態は避けたい。できれば隠し通したい。  しかし大人たちは長老が遠くで子供たちと話をしているのを確かめると、こそりと薄珂に囁いた。
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