第三十一話 牙燕将軍の見た未来

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「お前どうなんだ。透珂様のご遺志を継ぐわけでは無いんだろう?」 「それは――……え!? 俺が透珂の子供って知ってるの!?」 「そりゃあそうさ。よく似てる」 「そんな、なんで何も言わなかったの」 「そりゃ透珂様には言ってやりたいさ。国民を捨てて逃げやがって。けどお前は透珂様じゃない」 「何も知らない子供に罪を背負わせるほど馬鹿じゃねえよ」  え、と薄珂は思わず背が伸びた。 (みんな透珂を憎んでるのか?)  薄珂の印象じゃ長老は皇族側の人物だ。その長老に守られた彼らも皇族側で、ならば当然透珂を敬愛するのだろうと思っていた。  だが里の大人は全員が不愉快そうに透珂の愚痴を言い合っている。 「……じゃあ俺を里に入れるの嫌だったんじゃない?」 「まあな。だから長老様は龍鳴の傍に置いたんだ。俺らの意を汲んでな」 「けどあれは俺達が間違ってたよ。慶都の言葉は効いた」 「慶都?」 「守れるのに守らないのは殺すことだと叫んでいた。それは俺達が透珂様へ抱いた感情と同じ。透珂様と同じことを俺達はしていたんだ」 「蛍宮へ移住しなかったのってそれが理由? 透珂が棄てた国だもんね」 「それは」 「棄てたのではない。一時預けられただけだ」 「が、牙燕様」  里の大人たちは急にぴしっと背筋を伸ばした。俯き目線をうろつかせ、いかにも「しまった」という顔だ。  しかしそれをどう言うこともなく、牙燕はじっと薄珂を見据えていた。
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