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「りーっか。起きないと今日は腸詰無しだぞ」
立珂は腸詰が大好きだ。食べ物の中で一番好きで、毎食五本は必ず食べる。色々な種類のを並べてやると目を輝かせ、どれから食べようか悩む姿もまた愛らしい。寝ぼけている立珂が見れなくなるのは残念だが、その先に新たなご褒美が待っているのだ。
これを言えば立珂秒で起きるのだが、どういうわけか立珂は起きようとしなかった。いつもの立珂からはとても考えられない。欲しがらないなら、それは欲しがる余裕がない異常事態が起きていると思って間違いない。
「立珂!? 具合悪いのか!?」
「ん~……」
俺は慌てて立珂を抱き上げた。確実に何かしらの異変が起きているはずだ。抱いて立ち上がろうとしたが抱き上げた感覚がいつもと違っていた。
立珂はもうじき十七歳だが、長年運動不足だったせいか発育が悪く十二、三歳くらいに間違えられる。
けれど羽があるので重さは普通の子供と変わらない。しかし今日はいつもと感じる重さが違う。明らかに違う。抱き上げた立珂を見ると、明らかにな異常事態が発生していた。
「……へ?」
「んぅ~……」
俺は立珂を抱っこして寝間着のまま家を飛び出した。
全力で走り飛び込んだのは、保護者になってくれている響玄先生とその娘である美星さんの住んでいる家だ。
「先生先生先生先生先生先生先生!」
「お、おお。どうしたそんなに慌てて」
「立珂が、立珂が!」
「立珂様に何か!?」
「ち、ち……」
「ち?」
立珂を抱きしめる俺の両手は震えていた。震える両手で立珂を二人の前に掲げて見せた。
「ちっちゃい!」
「う?」
二人は目を丸くした。しかし立珂はいつもと同じようにこてんと首を傾げている。
この愛らしさは間違いなく十歳頃、外見だけみればの五歳よりは大きく十歳には満たないほどに幼い立珂だった。
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