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「違います! それは私が決めたことだ!」
「そりゃ護栄様はそう言うよ。美星さんを守るには天藍を守る必要があるもん」
天藍は眉をひそめて俯いていた。
そして逃げるように顔を背けると、消え入りそうな声でぽつりと漏らした。
「……そうだ。俺は戦後足枷になる有翼人を減らしておきたかった」
「だろうね。それには同意するよ」
「天藍様! お止めください! 薄珂も!」
これほど狼狽える護栄の姿は見たことが無かった。いつでも凛と前を向いていた護栄からは想像が付かない。
けれどその姿に目を背け、薄珂はぐいと天藍の胸ぐらを掴んだ。
「政治に偶然はない。偶然という必然を作らせたならその責任を取るべきだ」
「皇太子として全種族平等に尽くす。これが責任だ」
「国民がこれを知ったらどう思うだろうね。仕方ないですねと笑って許してくれると思う?」
「……俺を脅すか」
「今後について現実的な検討だよ。まあ、一つだけお願い聞いてくれたら黙っててあげるけど」
「お願い?」
薄珂はにこりと微笑んだ。
お願い、と疑問の声を漏らしたのは護栄だ。
そして天藍は声を上げて笑った。
「なるほど! 護栄を揺さぶったのは俺を強請るための前振りか!」
「真相が強請りになる天藍が悪いと思うよ」
「違いない。何が望みだ」
「真実を明らかにする。そのためにも牙燕将軍と話をしてもらいたい」
「有翼人狩りの真相は牙燕将軍もご存知だ。だから国葬を提案下さった。先々代皇が目指したとおり、これから蛍宮は有翼人をも愛すると知らしめるために」
「そうだね。でも俺に必要な真実はそれじゃないんだ」
「何?」
「もう一人迎えに行く。それから牙燕将軍と話しをしよう」
「もう一人? 誰だ」
「参加資格のある人をだよ」
薄珂は天藍たち三人へにこりと微笑み歩き始めた。大人三人はごくりと息を呑み、しずしずと薄珂に付いて歩き始めた。
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