第三十四話 生きていた薄立

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「何故……黙っていた……」 「……貴方の想いは知っていました。それでも名乗り出ることはできなかった」 「何故だ! 敵は宋睿。私では無いだろう!」 「私に愛国心などありませんでした。理不尽に宮廷からはじき出され両親の愛情も知らない。そんな仕打ちをした国のために生きることがどうしてできましょう。貴方の想いに答える意志も情も、私には欠片も無かったのです」  牙燕は拳を振り上げ大きく口を開け、怒りに満ちた顔で何かを叫ぼうとしたようだった。しかし何を言うこともなく拳を降ろし、ぎりぎりと歯ぎしりをしている。 「牙燕様。この国は変わりました。もう醜い争いを繰り広げた蛍宮ではないのです」 「この国から先々代皇陛下を消し去れというのか!」 「それは」 「許せないよね。分かる分かる」 「は?」  怒りが収まらず震え続ける牙燕の肩を薄珂はぽんっと叩いた。  場にそぐわず軽い調子であることを異様に感じたのか、全員がぽかんと口を開けている。 「さて、っと。俺は無関係だったから恩のある長老様に味方することにしようかな」 「何ですって?」  真っ先に声を出したのは護栄だ。  何かを察したのだろうか、さっきまでしれっとしていたのにとても厳しい顔をしている。  けれど薄珂はそれには答えず、天藍に向かってにこりと微笑んだ。 「商談だ。皇太子の座、渡してもらう!」 「……何だと?」
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