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「正式な発表はまだですが、友好国である蛍宮へは先んじてご挨拶申し上げる」
そして麗亜は一歩前へ出て天藍と護栄に深く頭を下げると、書簡に綴られていた内容を自ら宣言した。
「公吠は皇の座を退きました。新たな明恭皇はこの私」
「そういうことか……!」
全員が見ているというのに、珍しく護栄は丁寧な言葉を忘れ薄珂をぎりぎりと睨み付ける。
「私は武力ではなく商談で終わらせたいと思っています。そこで華理国主勝峰殿から羽根を納品してもらえないか提案したところ快くご承諾いただけました。どうやら誰かから完成された羽根収集の運用があると助言を得たようでして」
薄珂はにこにこと微笑み続けた。羽根を集める方法も宮廷への提供も、薄珂がこれまで『天一』としてやってきたことだ。
護栄はつうっと汗を流し、悔しそうにしながらも笑みをを作っている。
「私を踏み台にしますか」
「上司のやり方に倣っただけだよ」
他人事ではないだろうに、くくっと天藍は面白そうに笑った。
はあと護栄は大きなため息を吐いて額を抑えている。
「人を狂わせる覚悟をしたというから警戒はしていましたよ。しかしまさか明恭ごと動かすとは」
「それは違うよ。これは利害の一致による商談で、俺が振り回すのはこの三人目」
「はい?」
肩を落としてる護栄の前に薄珂は全く違う人物を前に押し出した。
それは皇太子から受勲され有翼人保護区の警備も担い、何よりも立珂を優先する慶都だ。
護栄は再び目を見開いて息を呑んだ。これには天藍も身を乗り出してきた。
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