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「まさか」
「俺は立珂と行く! 華理で一緒に暮らすんだ!」
「蛍宮にいれば輝かしい未来があるだろう。でもその全てを捨ててもらった。けど天藍達にとって大事なのは慶都自身じゃないよね」
「……慶真はどうするんだ」
「それを決めるのは俺でも慶都でもないよ。でもおじさんが優先するのはいつでも家族だった」
「全て持っていくつもりですか……!」
「それは天藍と護栄様がおじさんの心を動かせるかどうかにかかってるよ」
慶都はとても優秀だと評判になった。けれどその土台には蛍宮を救った英雄の一人である慶真という父親の存在は大きい。
もし慶真が息子に着いて行くことを選択したら、蛍宮の軍事力は一気に落ちる。
そうなれば今こそ攻め時だと思う国もあるだろう。それこそ世界最大の軍事国家である明恭だって目を付ける可能性もある。おそらく護栄もそう考えたのだろう、横目で麗亜を見た。しかし麗亜はくすくすと笑った。
「これからも護栄殿とは友好的な関係を築きたいと思っていますよ。対等にね」
「対等ですか……」
これまで護栄は常に優位に立っていた。愛憐の一件があってから明恭は下手に出るしかなかったが、こうなると話は変わってくる。
薄珂が慶都を握り、慶都次第では慶真も薄珂の側に付く恐れがある。その薄珂が拠点とするのは華理で、それが天一の事業であるなら引き続き響玄の庇護もある。そして薄珂と麗亜は同じ兄という立場の友人であり、天藍は薄珂と立珂の生活を保障しなくてはいけない。
護栄は唇を噛んで悔しさを前面に押し出したが、薄珂はそれを見てにやりと笑った。
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