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第一話 ちっちゃな立珂のおっきな挑戦
薄珂は小さな立珂が腕から落ちてしまわないようしっかりと抱きしめた。
響玄と美星はその腕の中できょとんとしている立珂をまじまじと見つめている。
「これは……」
「ちっちゃい頃の立珂なんだ! 痛いとか苦しいとかはないみたいなんだけど立珂も何があったか分からないって! でも立珂は立珂でどっかいっちゃって違う立珂が来たわけじゃなくていっぱいいたら可愛いけど立珂はこの立珂なんだ! 立珂がちっちゃい時は俺も子供だったからあんまり覚えてなかったからちっちゃい立珂を見れるなんて思わなかった! すごく可愛い! どうしよう!」
「焦ってるのか冷静なのかどっちだお前は」
「お気持ちは分かりますわ」
異常事態でも薄珂の口から出て来るのはいつもと変わらない、弟を溺愛し称賛する言葉ばかりだった。
しかし響玄と美星は冷静だった。驚きはしたようだったが、青ざめたり危険を感じた様子はない。
美星は大きな瞳をぱちくりさせている立珂の頬をそっと撫でた。
「大丈夫。これは成長期に入られたのです」
「成長期!?」
「有翼人は成長期が二回あります。一度目は幼い姿に戻り、二度目で成人体になるので一次成長期ですね。終えるまで凡そひと月ですが、もっとかかる子もいます」
「そんなのがあるの?」
「ええ。立派に成長している証拠です。おめでとう御座います、立珂様」
「う?」
相変わらず立珂はきょとんとしていてよく分かっていないようだった。
しかし美星は成人している有翼人だ。羽は有翼人狩りで一度切り落としてしまったそうだが、今また生え始め有翼人専用服が必要なほどになっている。成長期も経験してきているだろう。そしてその美星を育てた響玄も当然成長期を見ているはずだ。
二人は慌てるどころか安心したように微笑んで立珂を撫でている。薄珂もその様子を見てようやく安堵し息を吐いた。
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