82人が本棚に入れています
本棚に追加
案内された先は中央庭園を抜け離宮を二つ横切り、さらにその奥だった。
そこには背の低い草が一面に咲いているだけだった。閑散として職員は誰もいない。離宮からも離れているので侍女が清掃する音も聞こえず、風が吹きすさぶ様は寂しく感じる。
「ここ何?」
「国葬墓地だ。国が葬儀を上げた者が眠っている」
天藍はちらりと立珂を見ると、ふいっと目を逸らし中央に向かって歩き出した。
向かった先にあったのは大きな石碑だった。薄珂が両手を広げても掴めないほど大きい。よく磨かれていて美しかったが、気になったのは備えられている物だ。
「これって」
「『りっかのおみせ』のふくだ! ぼくのふく!」
「ああ。今までは花を手向けていたが、今彼らへ贈るべき品はこれだろうからな」
「彼ら?」
天藍と護栄は石碑の前に膝を付き、祈るように手を合わせた。何に祈っているか分からず石碑を見ると、そこには人の名前が刻まれていた。それも一人や二人ではない。石碑にびっしりと刻まれている。
とても数えることはできないそれを目で追っていると、天藍はそっと刻まれた名前を追うように撫でた。
「彼らは有翼人狩りで殺された有翼人だ」
「……え?」
最初のコメントを投稿しよう!