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「瑠花は、子ども好きじゃないの?」
「見てるとたまに、つらくなるんだよね。まぶしすぎて、逆に?」
「へええ。おもしろーい」
実鈴は感心したように背もたれに寄りかかった。自分と違った意見も好意的に受け止められるところは、何よりの長所であり武器だ。
「小さい子ども連れのお客さんもよく来るから、相手できるようになるべきだとは思うんだけど」
「自主的にカフェのお手伝いしてるんだっけ。偉いよねえ」
「いつもお世話になってるし、それに雰囲気いいからやりやすいよ」
「いいな、私も瑠花のとこでバイトしたい」
私たちが通っているこの高校は、私立にしては校則がゆるくて風通しがいい。学校に届け出をすれば、生徒のアルバイトも可能だ。
「優雅にお茶運んでー、休憩にはおいしいスイーツもらってー、そんで店員さんかわいいですねって声かけられたりしてー……」
「実鈴はバドミントン部があるじゃん。それにたぶん、うちのバイトの座はあいつがゆずらないから」
タコさんウインナーの足先をちまちまかじりながら、教室の窓側にかたまっている男子グループに目をやった。
あいつこと伊坂は窓のへりに腰かけながら、細長いスティック型のチョコレート菓子をつまんでいた。ひなたの場所に吸い寄せられる習性持ちなのかもしれない。
不本意なことに、私と伊坂は同じ高校の同じクラスだ。この変な縁は、今のところ実鈴しか知らない。
うっかり目が合いそうになってしまったので、視線を戻す。卵焼きを食べるとなんとチーズ入りだった。かめばかむほど、チーズのうまみと卵の甘さが深みを増していく。うん、やっぱり正樹さんのお弁当は最高だ。
放課後、バドミントン部の活動がある実鈴に別れを告げて足早に学校を出た。今日はディドルで手伝いをする日だ。
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