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寝起きのぼんやりとした頭を目覚めさせるように、柔らかな朝の光がレースカーテンを通して部屋を明るく照らす。その明るさに反して、室内に家族の賑やかな会話はない。聞こえてくるのは、テレビの中の声だけ。両親は共働きで朝早くに家を出るので、「おはよう」を言うタイミングさえない。兄弟姉妹はおらず、1人でテレビを見ながら朝ごはんを食べる。これが里中メグの朝の日常だ。
母が作っておいてくれた冷えた目玉焼きを、トーストした食パンの上に乗せる。マヨネーズをかけて頬張ると、テレビではお決まりのコーナーが始まった。
「それでは今日のお天気です」
ニュースは流し見するだけだが、天気予報は必ずチェックする。このコーナーを見る為だけにテレビを付けていると言ってもよい。流行りのファッションに身を包んだ美人なお姉さんが、にこやかにその日の天気を知らせる。
「現在晴れている所でも、午後からは雲が広がり、夕方には広く雨となるでしょう」
まさにメグが理想とする天気だ。一日中晴天もしくは雨、また雨のち曇りでは駄目なのだ。夕方から雨、この予報が出た朝は少しばかり胸が高鳴る。その限られた日だけに行う秘密が、メグにはあるのだ。
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