曇天だけが知っている

　メグは前回書いた言葉をあえて消さず、その隣に新たな言葉を付け足した。

　〈I can alter my life by altering my attitude〉

　態度を変えることで、私は人生を変える事ができる。

「おっ、それもソローだな。いいね」

　ヒロが顔を上げて明るい笑顔を見せる。メグはその笑顔にぎこちない笑顔で返し、再び曇天に目を向け願った。

（雨よ、降らないで。もう少しだけ待って。あと少し、このままでいさせて〉

　心を動かされながらも、現実的ではないからと、純粋な気持ちでは捉える事ができなかった恋の言葉たち。今なら信じられる気がする。素直に自分の気持ちと向き合う。そんな風に態度を変えることで、これからの人生が変わるかもしれない。これまでとは違う一瞬ではない希望を抱き、メグはヒロの隣に座って本を開いた。

　今はまだ、この空だけしか知らないメグの恋心。その想いを優しく包み、曇天は静かに2人のもとから離れていった。