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アリスが育ったのは、良い年頃になったら子どもを売り飛ばす系孤児院だった。
ろくに食事も与えられず、扱き使われて暴力をふるわれた。どんどん自尊心を失って暗くなる子どもが多い中、リックとマーサの2人と集まっては、大人になったらコイツら絶対殺してやると呪詛を吐くような子どもだった。
そんなアリスに聖魔法の素質があると見るや、孤児院はアリスを教会に高値で売り飛ばした。10歳の頃のことである。
教会には他にも聖女がいたが、流石に孤児出身はアリスくらいだった。そして神官も貴族出身が多かったので、アリスは冷遇された。
それでも、孤児院よりは遥かにマシな生活を送れたので、当初は問題無かった。
問題が起きたのは、12歳の頃。真面目に過ごしていれば特に何も言われないので、アリスはメキメキと力をつけて行った。いつか孤児院のくそばばあ達を殺すために頑張った。
そんな動機は誰も知らないが、復讐に燃えるアリスはメキメキと力を付けて、既にこの教会ではトップクラスの実力を誇っていた。
そうすると、一部の神官や聖女達は、アリスに好意的になったが、それを面白く思わない者もいた。
聖女ブランドで箔をつけて、結婚を有利に進めたくて教会入りした、通称腰掛け聖女達である。
彼女達はアリスにバケツの汚水を頭から掛けて、アリスを卑しい孤児だのなんだの罵った。
アリスは最初罵詈雑言に腹を立てたが、ひとまずは様子を見ていた。だが、腰掛け聖女の中に高位貴族の令嬢でもいたのだろう、誰も動こうとしない。最近は話しかけてくれていた人達も、困った顔をしてオロオロするばかり。
邪魔が入らないことや、何も言い返さないアリスに気を良くしたのか、腰掛け聖女達はどんどんヒートアップしていく。
アリスは元々、冗談抜きで卑しい生まれである。本人は知らぬ事だが、母親は美人局、父親は殺人犯という、バリバリのクズのサラブレッドなのである。そして裏町のクソみたいな孤児院で育った。
皮肉にも聖女なんかになったが、そんなクソみたいな血筋と環境で育ったアリスが、心優しく清らかな聖女なわけがなかった。
「浄化、結界」
アリスは汚水で汚れた体を浄化し、腰掛け聖女達を結界に閉じ込めた事を確認すると、「一昨日来やがれバーカ」と罵って、その場を後にした。
流石にこれはまずいと神官や聖女達が結界の解除に取り掛かったが、腰掛け聖女達はもちろん他の者では結界を解除する事が出来ず、頼んでもアリスは解除してくれない。
近隣の教会からも応援を呼んだが、誰も解けない。
3日も経つ頃には、腰掛け聖女達は糞尿まみれで衰弱し、涙ながらにアリスに謝罪し懇願していた。
それを見てニンマリ笑ったアリスは、「立場は理解出来たか?次やったら殺すぞ?」と脅すものだから、腰掛け聖女達は顔を真っ青にして服従を誓った。
こうして腰掛け聖女達は解放されたが、3日も飲まず食わずで閉じ込められ、失禁までして泣きわめく姿を衆人環視に晒された為に、バッキバキに心を折られていた。半分は精神を病んで自宅に帰った。アリスに怯えた腰掛け聖女達は、報復を恐れて親にも言えなかった。
ちょっといじめてやろう程度だったのに、実に憐れである。
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