恋を彩る雨粒のカーテン

予報にない雨模様

　退屈な授業中……。

「雨が降って……、“傘を貸す”とかなかなか憧れるシチュエーションだなぁ」

　ふと、彼は変な想像力を働かせて退屈を凌ぐのだ。“変人”などとは思わないでほしい。人間誰しも現実から離れたい時はあるであろう。

「雨が降って困っているところに、傘を貸して……「一緒に」なんて絶対に無理だから、走って帰れば………」

　一人で妄想の世界に浸る。

「さすがに、誰かに借りるとかするだろうから、そんなことになるはずないけど」

　想像することは、誰にだってできる。
　人の自由だ。想像することだけであれば、迷惑をかけることもなく一人の夢世界として楽しめる。退屈な時間を解消するには都合がいい。

『傘を貸して、「俺は濡れてもいいから大丈夫」と言って見るのはどうだろう？』
　勇希は思う。恋愛小説は全てが都合良くできているのだと。

「いいなぁ〜。恋愛小説の主人公になってみたい」

　色々な想像をする。
　教室で近づいて行って、「傘あるけど貸そうか？」と堂々と言ってみたい事や、「傘ないみたいだから待ってた」みたいな事を言いたいと。

「お、もう少しで昼休みか」

　お昼休み直前――――。
　気づけば、窓の外に太陽が輝く姿はなく、薄暗い世界へと変貌を遂げていた。

「まじで、雨降るな。傘あって良かった」

　大空を覆う雲は少しずつ厚さを増していく。
　彼の想像力も深みを増していく……。