第三章:指環は嵌めたまま

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「お兄さん、七年前のクリスマスにうちの病院で亡くなったんだよね」  ふと見やると、相手は切れ長い瞳いっぱいに涙を溜めていた。 「あの時、私、何にも知らないで浮かれて旅行の写真なんか送っちゃって」  オリーブ色のセーターの胸にポロポロと涙が零れ落ちて染みを作る。 「ずっと後からお兄さんがその日にうちの病院で亡くなってたと人から聞いてどうしようって」  狐じみた小さな顔に恐怖と後悔の半ばする涙が流れ続ける。
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