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「もう一つだけ、聞いていいかな?」
相手は先ほどとはまた別な風に思い詰めた眼差しを向けている。
「何?」
――坂口くんは付き合っている人がいるの?
――好きな人はいるの?
そんな告白に繋がる質問が浮かんできて、何とはなしに胸が早打つのを感じた。
いや、俺はこの子を別に好きな訳じゃないぞ。
むしろ、この子の好意が疎ましく、ずっと苦手と感じて避けてきた。
告白なんかされたら、即座に答えるだろう。
――悪いけど、そういう目では見られない。
だが、自分がこの子と付き合っても一般には非難される間柄ではないのだ。
高校のクラスメイト同士のカップルならありふれているし、微笑ましくすら見られるだろう。
――白河先生のお嬢さんなら。
母親が嬉しげに答える顔が浮かんだ。
――蓮くんにも彼女が出来たんだ。
何より病床の優衣さんも喜んでくれるだろう。
――良かったね。
想像の中の痩せ衰えた笑顔に胸が締め付けられるような痛みを覚えた。
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