VOICE

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── 『あ〜……凪島?アイツは目付きが悪いから嫌い』 『思いやりって言葉をどこかに置き忘れてる』 『ってか、アイツも俺らの事が嫌いだろ』 『すっげえ分かる』 『俗物の相手をしたくねーってのが伝わるわ』 ……なんで。 『声はクソ優しいから惑わされそうになるけど、言ってることがちっとも穏やかじゃねーの』 『喧嘩売ってんのかって思うよな』 『でも言ってることは正しいからちょっかいをかけたらこっちが悪者になんの、アイツももう少し言い方を考えろって思わねえ?』 ……俺はただ、思ったことを言っているだけだ。他人を貶めようとなんてしていない。そんなことは、寧ろ俺が一番嫌いな事なのに。なのに、なんで、なんで、なんで!俺は、俺はただ──……! 『瑠衣くん』 『瑠衣』 『凪島くん』 「──……」 瑠衣は自室で文庫本を読み耽る最中、要らぬ思考に邪魔をされて指先を眼鏡の弦へと伸ばした──そしてまた考える。自分ですら自身を見つめる時に眼鏡を手放せないのに、他人が色眼鏡を掛けずに自分を見てくれるなんて希望は持たない方が良い。そんな事は分かりきったことじゃないか、何で今更ちっぽけな望みを持とうとするのか。 どこまでも愚かな己に舌打ちをすると、紫陽花が印刷された栞を文庫本に挟んで椅子へ深く身を預ける。 ……暗がりの中降り続く雨は、未だ止む素振りを見せない。
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