153人が本棚に入れています
本棚に追加
『ご乗車ありがとうございます』
ガタガタと揺れる車内。キーと鳴る線路と車輪。徐々に加速する列車。
『次は、冥界。冥界』
少し音質の悪い車内放送が僕を夢から覚ませた。
「めい、かい?」
冥界ってあの冥界?
慌てて頭を上げる。バコンッと大きな音。それと同時に重い痛みが後頭部に走った。
「痛ってぇ!」
頭を両手で抱える。数秒そうしてから、今度はゆっくり頭を上げる。
そして後ろを振り返る。
「は?これ……」
窓の外は深い緑だった。
いや、緑の棒が沢山立っていた。しかもよく見ると棘が生えている。刺さったら確実に血が出る位鋭い棘。そう。それはまるで、
「薔薇みてぇだな」
薔薇の茎。
最初のコメントを投稿しよう!