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七月上旬の月曜日。
一時間目が終わった休憩時間、五年一組の教室にて。
シャーシャーと鳴くクマゼミの合唱は気に止めずに、柑奈は休憩時間に先程返ってきた一学期の算数のテストを見つめていた。
「柑奈ちゃん、また百点とったの!?」
柑奈のクラスメートの相馬桃李は驚いた。桃李は星の入った尖った襟の半袖シャツと青色のズボンの制服を着ている。優しく細い黒髪の桃李は黒ぶち丸眼鏡をかけているのが特徴だ。
柑奈は頷いて、桃李に答えた。
「でもこのテスト難しかったから復習しなきゃ」
「百点とったのに?」
「問題を何度もやらないと忘れちゃうから」
「相変わらず柑奈ちゃんは凄い。どのテストでも百点以外とらないんだもん」
そう呟く桃李を見て、柑奈は照れくさそうに口を開いた。
「百点を目標にして勉強するのが好きなの」
「そうなんだ。恥ずかしながら僕は算数のテスト二十点だった」
桃李は困ったように笑っている。桃李は勉強は苦手だけど驚くほどに運動が得意で、人と仲良くなるのも上手くて、見た目は可愛さとかっこよさ兼ね備えている。テストで百点をとれなくても桃李は素敵な男の子だと、柑奈は思う。
「もし桃李くんが良ければ、私が勉強を教えるよ?」
柑奈の言葉で、桃李はぱっと顔を明るくする。
「え、本当!?」
「うん。桃李くんのお手伝いができたら私は嬉しい」
柑奈がそう言って微笑むと、桃李はしししと笑った。
桃李の笑顔を見ると、柑奈はいつも思う。
『今年、優しい桃李くんと私を同じクラスに決めてくれた先生には大感謝だ』と。
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