雨の演奏会。

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街には今日も雨が降る。 雨は恵みだと言う。何年も前の話だが雨が振らない年があり、水が枯渇し食物にも影響が出たことがあったらしい。 私は今、アパートで一人暮らしをしている。 今日は休日で近くの商店街に買物にでかける予定だったが、面倒になりベランダの窓から雨を見ている。朝は小雨だったのに、どんどん雨脚が強くなっている。私はぼんやりと、ただただ雨を眺めていた。 「あれ。」 何だか景色に違和感を感じた。ベランダに何かがいるのだ。小さくて、身長が10センチくらいの人だ。 しかも頭には雨粒の被り物をして楽器を持っている。小人は5人いてベランダで楽器を持ちながらくるくると、八の字に歩いているのだ。   「かわいい。」 私はベランダの窓を開けてみた。 屋根があるから濡れはしない。 小人は私に気づくと少しびっくりした表情を見せた。その後、私の前に整列した。 「雨の音楽会にようこそ。私たちは雨の鼓笛隊です。今日はゆっくりと私たちの演奏をお楽しみください。」 私は拍手をした。 小人たちが奏でる音楽は水琴窟みたいな音だった。 小人たちは、演奏しながら踊りみんな楽しそうだった。笛2人、太鼓、トライアングル、アコーディオンを弾いている。トライアングルの子はいつも踊りの調子を外す。外したときの悔しそうな表情もまた可愛いかった。 演奏会は、続いていく。3曲が終わったときだ。 疲れたのか、葉っぱを何枚かベランダに置きみんなその上で休みだした。きのみを食べたり汗を吹いたりしていた。私は話しかけてみることにした。 「素敵な演奏をありがとう。なんかお礼したいのだけど、何が良いのかな。」 「お礼はいりません。それにまだ演奏会は続きます。私たちの演奏を楽しんで頂くことが何よりのお礼です。良かったらもう少しお付き合いくださいませ。」 私はうなずいた。遠くの空が少し明るくなってきた。そろそろ、雨がやむのかもしれない。 小人たちはまた、整列し演奏を始めた。可愛らしいメロディだ。雨の音とともにテンポ良く進む曲たち。何時間でも聴いていたい。 5曲目が終わる頃には、雨が弱くなり始めた。 小人は私の前に整列した。 「本日は、演奏会にご参加いただきましてありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか。」 私は頷き拍手をした。 「ありがとうございます。そろそろ空が明るくなってまいりました。私たちはまた空へと帰ります。 またお会いできる日を楽しみにしております。」 小人はそう言うと、みんなに合図をし、お辞儀をして空に飛びたった。 私は拍手をしながらありがとうと、何度も伝えた。 やがて空は明るくなり虹が顔を出した。 「雨よふれ。」 私は空に向かって呟いた。
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