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第1話 あやかし
「先日たすけてもらった手の小指です!」
助けた覚えはない。
数日前、タンスに足の小指をぶつけた記憶はあるが。
新手の勧誘だろうか。指だけに。
救ってほしいのは、俺のほうだ。
投資に失敗し、首を吊ろうとしている真っ最中である。
200万円のテレビなんて買わなければよかった。
「焼野原 新之助さんは居ますか?」
玄関先で俺を呼んでいる。
少女の可愛らしい声だ。
返答しそうになったが、放っておこう。
「家計が焼野原になりそうな、しんのすけさんはご在宅ですか?」
なんで俺の懐事情を知ってんの?
怖いから無視しよう。
「外国為替証拠金取引で、約1億円の資金を溶かした、焼野原さんは生きてますか? おっさんですか? シャアですか?」
俺はおっさんの部類に入る年齢だと思う。だが、シャアではない。
放置するのはまずい。あらゆる俺の個人情報が近所にダダ漏れてしまいそうだ。
恐々ドアを開けると、絵に描いたような姫カットの少女が立っていた。
身丈の短い着物(和風のミニドレス)にウエスタンブーツという、和と洋のコラボ系スタイル。
8歳くらいだろうか。こぢんまりとした身長だが、きれいな顔立ちだ。
髪と着物が紫色のおかげが、獲れたばかりの茄子に見える。
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