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「この家に住むなら、靴を脱いでもらおうか!」
ユイの靴を力のかぎり引っ張ってみるが、激しい抵抗を受けた。
頭突きからの鼻フックはやめて。普通に痛い。
「しんのすけのあほぉ!」
足をバタつかせながら、ユイが指を鳴らす。
俺の頭頂部に火が点いた。半分ほど髪が燃えてしまったようだ。
ヒナに渡された手鏡で確認すると、俺の頭部は焼野原と化していた。
「わたくしは、水と電気を操ることができますの」
人差し指から出した水で、ヒナが燃え盛る俺の頭部の消化をしてくれる。
「ユイは何が使えるんだ?」
「激おこプンスコ丸なんだぞっ!」
ユイは、ご機嫌ナナメだ。少し懐かしいことを言いながら、頬を膨らませてソッポを向く。
「お姉さまは、火と電波を操れますの」
空気の読めるヒナが、超端的に説明してくれた。
「2人そろえば、ライフライン(電気・水道など)を確保できるということか」
「わたくしたちは『チョウピラコ』。最高ランクの座敷わらしは、1世帯に1人と決まっていますの。どちらを家におくか選んでくださいですの」
妖怪組合の決まりで、妖怪は1軒に1人しか住めないらしい。
ヒナの表情は、ちょっと寂し気だ。
「わたしと妹で殴り合いをして決めましょうか?」
「それはヤメて……。やっぱり、すぐに決められないから、少し時間をくれる?」
ユイとヒナは、互いの顔を見合わせる。
2人同時にうなずいた。
「とりあえず、ふつかものですが、よろしくね!」
出来て日の浅いワインのような挨拶をユイが繰り出す。
不束者と言いたかったようだ。
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