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第4話 あやかしの姉妹
ある日の朝。
電話の音で目が覚めた。時計を見ると午前6時だった。
普段なら座敷わらしに起されているころだが、2人の姿がない。
妙な胸騒ぎがするなか、受話器を取る。
「あ、オレ、オレ」
詐欺かと思ったが、父だった。
滅多に連絡してこないのに珍しい。
「妖怪のふたりは元気か?」
父から質問が飛んでくる。
はっきり妖怪と聞こえた。
父も妖のたぐいが見えるらしい。
返答に困ったが、とぼける必要はなさそうだ。
「散歩にでも行ってるんじゃないか」
俺と妖怪の姉妹、3人で撮った写真が目に入った。
妖怪の姉妹の姿が消えている。
2人の間で、バカみたいな笑みを浮かべた俺だけが残っていた。
目的を達成すると、座敷わらしはその家を離れてしまうらしい。
2人が写真から消えたのが証拠だ。彼女らは、なんの痕跡も残さないと、父は言う。
慌てて家の中を探したが、2人の姿はない。
家電量販店など、ユイとヒナが出没しそうな場所を片っ端から探しまわったが、見つからなかった。
別れは突然やってきたのだった。
可愛らしい妖怪との生活は、しばらく続くと思っていたのに……。
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