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ユイと共に家電量販店に来ていた。
大小さまざまな液晶テレビがズラリと並ぶ一角に立つ。
ご機嫌な様子のユイは、ビックリキャメラのテーマを口ずさむ。
やめろ。ここはヨドバスカメラだぞ……。
チャンネルを片っ端から変えるユイ。
全てのテレビを同じチャンネルにしないと気が済まないタイプのようだ。
隙をみて逃げようと思った時だ。
突然、ユイが振り返る。
「指ぱっちんをしてみて!」
テレビが爆発しないことを祈りつつ、俺が指を鳴らすと、ハナニックの液晶テレビだけがオフになった。
「これで大丈夫!」
ユイは、ほっこり笑顔だ。
展示してある全てのテレビのチャンネルを手動でMHKに揃えた。
妖術は使わないんだね……。
ヨドバスカメラの店員さんが、訝し気な表情で、こちらを見やる。
ユイの姿が見えていない様子の店員さんは、俺の仕業だと思っているのだろう。
「どこかに、ビックリキャメラさんのテーマを歌われているお客様がいらっしゃいますよね……」
ユイの声は、店員さんにも届いているようだ。
彼女はモノホンの妖怪だということか。
ユイは、例のテーマを口ずさみながら立ち去った。
嫌がらせの達人ユイは、またどこかでテロ活動を行うのだろうか。
「そう……みたいですね……」
こんな返答しか、俺にはできない。
ほんとスミマセン。犯人を知っています。
幼女の妖怪です……。
あの妖怪は何だったのだろう。
そんなことを考えながら、俺はひとり帰路につく。
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